自分用日記

『六人の嘘つきな大学生』を読んだ(ネタバレ有)

面白かった!!

 

中盤のギスギスした空気からは考えられないほどの清々しい読後感だった。

 

これは良いどんでん返し。どんでん返しがあると知らずに読めて良かった。

語り部以外の他の5人、あからさまに悪い奴兼怪しい奴に描かれすぎてて、さすがに実は良い奴なんだろ…!そうであってくれ…!って祈りながら読んだけど、本当に救いがあってよかった。

私は皆が善人であることを期待しながら読んだけど、結論は「良いところも悪いところもある」なの良かった。フィクションのキャラクターとは言え、人間が「いい奴」か「悪い奴」の極端などちらかであるわけがないとダンガンロンパV3(の某キャラクターを巡るファン同士の対立)で学んでいたはずなのに。

人の善性を信じる人と、人の悪性を唱える人の戦い、かなり好きかもしれない。そういう話があったら教えてください。波多野は性善説というよりは「良いところも悪いところもある」のスタンスだったけど。

私は現実で「なんとなく嫌な奴だな」と思った人が、良いことをしたり言ったりしているのを見ると浅はかな決めつけをしてしまったことに、バツが悪いというか悔しくなる(=逆に気分が悪くなる)んだけど、波多野は違った。積極的に相手の良いところを探しに行った。その心が私にはとても眩しく思える。こうなりてぇ~!

 

完全に余談だけど、ネット上だと逆に倫理的に悪いことを言ってるアカウントを覗きに行って、逆に社会的通念に沿ったことを言ってるのを見ると安心するんだよな。顔も知らない人が根っからの悪人である可能性を持っていることが怖すぎるのかもしれない。

 

他のキャラクター達も、後から良い面が強調されて、悪い面良い面両方を知ったからか奥行きがあるように見えるな。現実の人間と違って、フィクションのキャラクターは語られたことが全てだから余計に。

現実の人間の背景をここまで把握はできないけど、できないなりに想像力を持って相手の言動を解釈しないといけないな。そこを放棄してしまうと、他人と健全なコミュニケーションがとれなくなっていまうんじゃないか。これは自戒です。それはそれとしてコミュニケーションめんどくせぇ~!!俺は俺の生きたいように生きる!!という気持ちもなくはない。

 

伏線の張り方も鮮やかだったな。

インタビューの時に九賀が障害者スペースに駐車したのは、九賀自身に悪いところあるんじゃないかと思ってたけど、そっちか~!波多野から見て全然歩き方に言及なかったのは「フェア」じゃないんじゃないですか!?相楽ハルキも、やけに名前が出てくるなとは思ったんだよ…!

鴻上さんのの指輪の描写もよかったな…伏線とまでもいかないけど、ちょっと出てきた描写が後からちょっと意味を持たせられるのいいな…

 

嶌ちゃん良かった。バリバリ仕事ができる側の人間だから怖いとも思ったけど。新人とうまくいきそうで良かったな…

あと手代のこと、かなり好きだ…長年付き合ってる彼氏がいるのか…そうか……

 

就活についても色々言ってたね。新卒採用の面接、私もイヤなシステムだと思います。

イヤな面がこれでもかとあげつらわれていて良かった。自分が嫌いなものがボロクソに言われているのを聞くのは気分がいい。

やっぱり皆イヤだと思ってるよねこのシステム!?イヤだけど私には代替案を出して社会を変えることもできないから、流されるまま就活したよ。

実際の人事の方々がどう思っているかは人それぞれだと思うけど、「結局は運」というところは、御守りとして肝に銘じます。

 

最後、波多野が告発文を送ろうとしてたのが明らかになる所も好き。それまでは、登場人物のイヤ一面が明かされる描写が来る度に「ウワァ〰️〰️(不快)」になったけど、全ての謎が解かれてから持ってくることでこれまでと同じ「登場人物のイヤな一面が明かされる」の構図が一気に微笑ましいものに変わるのがお見事。私はそう解釈しました。